フォームは1ページに付き1つのことの時代かな(WEBフォームでも)

河内 純也
河内 純也


「私はダニエル・ブレイク」というカンヌでもグランプリを取った(「万引き家族」のひとつまえ、「パラサイト」の2つ前)ケン・ローチの映画が好きです。
UI担当としては特に、主人公のダニエル・ブレイクがハローワークにいってPCで必要な書類をダウンロードするところが切実に胸に迫ります。。。
彼は59歳で、失業中の大工。ほとんどPCをつかったことがない。フォームへの入力でイライラする。やっとのことで「OK」ボタンを押してもエラーの繰り返し。
最後にはパソコンがフリーズして「誰かこいつを解凍してくれー!!」と激怒。
UI担当としては、もう大敗北ですよね。

この映画は2016年に公開された映画で、ちょうど2015年のイギリスのUIの記事に以下のようなものがあります。
「フォームのいくつかの質問はまとめて1ページにしたほうが良い」

ダニエル・ブレイクはこの記事のアドバイスに沿って作られたかもしれないフォームに、時間をかけて一生懸命「必要事項」を入れたのに、なんでエラーかわからないまま「OK」ボタンを連打して、過剰なリクエストでパソコンとネットワーク処理に負荷がかかってフリーズしたのかなと想像できます。

確かに、2010年代前半までは、フォームはある程度まとめて1ページに表示するというのが常識でした。
そのほうが一気に処理できるし、時間かからないでしょう?ってことなんだと思います。
でも、2010年代後半になってから
「1ページに1つの要素」
ということが多くなった気がしませんか?

例えば、メールアドレスとパスワードを同時に入れるのではなく、メールアドレスをいれてOKを押す。
次の画面でパスワードをいれてOKを押す。

たしかにこうすると、どこの入力でエラーが起きているのかが明白です(そもそも1つしか項目をいれてないから)。
それに、項目が1つしかないからページが軽量で、タイムアウトなども起こらない。
あと、1つのことしか書いてないから、集中して入力できる=入力ミスがすくない。

みたいなメリットもあるのかなと。

特に、「使う人のITリテラシーの幅が大きい」「画面が小さい」「キーボードを片手で操作する」「通信が不安定」なスマートフォンだと、このメリットはすごく効果があると思います。

そう言えば、先日、うちの子供のニンテンドースイッチの初期設定をしてあげたのですが、こちらも「1ページに1つのこと」を入力するスタイル。

  • 使う人のリテラシーの幅が広い
  • 画面が小さい
  • キーボードが貧弱

みたいな、スイッチの環境だと、やっぱり「1ページに1つのこと」が使いやすいですね。
さすが、UIの王者・任天堂。

最近は、ほとんどの人がPCを触るよりもスマートフォンを触っているときのほうがながいですよね?
そして、スマートフォンのアプリやサイトは、どんどん「1ページに1つのこと」を入力するスタイルになってきていて、多くのユーザーがこのUIの作法になれてきているんではないかと思います。

たしかに、

  • 画面が大きい
  • キーボードなど入力方法がリッチ
  • 比較的ITリテラシーのある人が使っている

から、PCのブラウザ環境では、一気に処理できる複数のステップをまとめたUIがまだメリットが大きいのかな?
とは思います。
でも、多くの人がスマートフォンで「1ページに1つのこと」に慣れてしまってきている。
UI設計の王道として
ユーザーがすでに学習している慣れたUIを優先的に使う
という格言があります。

そうなると、多くの人が慣れてきてる「1ページに1つのこと」というのは、PCのブラウザでも徹底して実装してもいいのかなーと思った今日このごろです。
もし、「1ページに1つのこと」で、イギリスのハローワークの必要書類ダウンロードのページができていれば。。ダニエル・ブレイクももっと違う結末になっていたのではないかな。。

ダニエル・ブレイクはamazonプライム・ビデオでも見れますよー

ケン・ローチの映画はとにかく社会に救われない人たちのナマの怒りを感じられるので、いろいろ見てみるといいかなと思います。
最新作の「家族を思うとき」もまさに今見るべき映画。

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